富三窯といえば、花椿の絵柄が有名。明治5年に開窯し、四代目が日本原産の花椿をモチーフにして以後、「椿の富三」が通り名になっているほど。椿の赤にも、鮮烈な赤、落ち着いた赤、立体的な赤と様々。絵の具によるニュアンスの違いを丁寧に説明してくれるのは、五代目当主、佐竹敦夫さん。学生時代は日本画を専攻しており、繊細な絵柄を描くのがお好きだそう。椿ばかりにならないよう、使う人の好みに合わせ、ザクロやウサギ、幾何学模様を染付しているといいます。
最近は、コーヒー好きな自身の感性を生かし、50代男性の、こだわりの一点ものとして使ってほしいとデミタスカップ&ソーサーを作っています。器を使う人やシーンを思い描き、伝統的な絵付けを時代にあったデザインに融合させています。
また、器にひびが入ったり、割れたりしたとき、陶芸の窯では珍しく、金継ぎをしてくれます。気に入ったものを長く使ってほしいという富三窯の思いやりがうかがえます。