昔なつかしい、昭和の空気漂う店構えのかやの窯。ガラガラと引き戸を開け、のれんをくぐると、空間を飾る乾燥花と、所狭しと並べられた陶磁器、そして人懐っこい笑顔の当主、鹿目いく子さんが迎えてくれます。
かやの窯の特徴は、何度も筆を重ねて作られる、濃淡のある塗り方。陶器も磁器も、全て一度素焼きをした物を使用し、釉薬は何種類かの物を調合し、幾重にも筆掛をします。色の調合の割合、塗り方、窯の温度、火の当たり具合・・・それらの微妙な違いによって濃淡が変わり、ひとつひとつ全て違う模様に仕上がります。
店内にもうひとつ、飾られているのがろくろ。「もう座る人がいないですけど」と遠慮がちに語る鹿目さん。かやの窯は、現在は作陶は行わず、販売のみとなっています。窓から差し込む優しい太陽の光が、想い出にあふれた店内を静かに包んでいました。